パンパカパーン!
突如として鳴り響いた軽快な音に、思わず開いたばかりの黒い傘を取り落とすところだった。
「おめでとうございます!」
気付けば、雨は止んでいる。
「あなたは○○に選ばれました!」
今度こそ、傘を落としてしまった自分は、悪くないと思う。
だって、どういうことなのだろうか。
何故、ドシャ降りの雨が、急に止むことがあろう。
これは、ひょっとして、ひょっとしなくても、非日常へ一名様ご案内、というやつではなかろうか。
「それでは、良き○○ライフを!」
肝心な部分だけが聞き取れなかった。
そのことに気付いたのは、周りを見渡しても誰もいないことに愕然とした後だった。
建物から出て、傘を差したはずなのに。
その建物すらも消え失せた湿原のど真ん中で、ただ立ち尽くした。