第5回目

お題「あなたは○○に選ばれました!」/傘

 パンパカパーン!
 突如として鳴り響いた軽快な音に、思わず開いたばかりの黒い傘を取り落とすところだった。
「おめでとうございます!」
 気付けば、雨は止んでいる。
「あなたは○○に選ばれました!」
 今度こそ、傘を落としてしまった自分は、悪くないと思う。
 だって、どういうことなのだろうか。
 何故、ドシャ降りの雨が、急に止むことがあろう。
 これは、ひょっとして、ひょっとしなくても、非日常へ一名様ご案内、というやつではなかろうか。
「それでは、良き○○ライフを!」
 肝心な部分だけが聞き取れなかった。
 そのことに気付いたのは、周りを見渡しても誰もいないことに愕然とした後だった。
 建物から出て、傘を差したはずなのに。
 その建物すらも消え失せた湿原のど真ん中で、ただ立ち尽くした。


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