ふむ、君は興味深いことを言うね。
今、君は、この世界で発展しているのはマホウなのかカガクなのか判らなくなってきたと言った。
いったい、どちらが発展しているのだろう、と。
周りが魔法の力って言って使っている現象や道具の中に、見覚えのあるモノが混じっている……で、合っていたかい?
正解は、ちょっと複雑だ。
ほとんどの人から科学技術が忘れ去られたこの世界では、かつての文明の技術が魔法や魔術として扱われているんだ。
どうして自分がそんなことを知っているのかというと、特殊な一族に生まれたからだ。
科学技術の一部を受け継ぎ、メンテナンスするのが一族の存在意義。
だから自分は、例えば世の中の魔法と呼ばれている現象の一部が「ナノマシン」と呼ばれるモノによって支えられていると、言葉だけは知っている。
そして、かつての科学技術の多くが「電気」と呼ばれるエネルギーを使っていて、大量の電気を生み出すには「発電」しなければならないことも知っている。
発電に必要な装置の形は様々で、滝に設置されていることもあれば、山の頂上を削った平地に並べられていることもあれば、谷間に並んでいることもある。
あちこちに散らばる発電装置を点検するために、自分の一族は、世界中に散り散りだ。
散り散りなのに、一族なのかって?
その通りだよ。
一族同士は血族魔法で連絡が取り合える。
代わりに、一族の外から伴侶や養子を迎える時には特別な儀式を行わないといけないんだ。
今となっては、危険になってしまった儀式だ。
昔はナノマシンの調整を行う一族に頼んで安全に儀式を進めていたらしいのだけれど、今やナノマシンを調整する一族は特権階級の貴族としてふんぞり返り、頼んでも儀式を手伝ってくれなくなってしまった。
そう、この世界には案外多くの「特殊な一族」が存在している、と思う。
自分たちのようにひっそりと過ごす一族もあれば、特殊な血族魔法を使う者として華々しく活躍する一族もいる。
もしかしたら、存在を隠している一族だって、あるかもしれない。
……すまない、話が脱線してしまったね。
この答えは、納得のいくものだったかい?
そうか、納得してくれたのなら、何よりだ。
それなら、今度はこちらから質問しても良いかな。
君は、さらりと「世界」だなんて言葉を使った。
この話に出てきた、普通の人なら知らなさそうな単語も、一通り知っているみたいだったね。
君は、何者だい?