年改めの儀

「あのねぇ、アシュレイ」
「…何ですか、フェイ?また何か企んでるんじゃないでしょうね」
 こんな夜中に騒いだら迷惑ですよ、と渋い表情のアシュレイの腕を取り、フェイは唐突に大地を蹴った。
「わゎっ!?ちょっ、いきなり何を…」
「年改めお目出度う~!ってな訳で、周り見て見て♪」
「え、ま、周り、ですかぁ?」
 何だか妙に回りくどい言い方をするフェイの満面の笑みは、普段イタズラを成功させた時より心なしか柔らかく。アシュレイは半ば呆気に取られて周囲を見渡した。
「…すごい…そこら中光ってます」
「ね~?綺麗でしょ☆今、年改めの儀式の真っ最中だからね~♪」
 世界がその輝きを新たにする瞬間なのだと、嬉しそうに説明するフェイは心の底から喜んでいるように見えた。
「…アシュレイも呼んだのか?」
 やはり空中に翼を広げて佇んでいたリュージュが二人に気付いて言う。その頬が上気しているように見えるのも、きっと気のせいではないのだろう。
 ──この壮大な光景を前にしては。
「自分達って、ちっぽけですねー」
 しみじみと呟くアシュレイに、フェイとリュージュは顔を見合わせた。
「…そうか?」
「アシュレイ、言い方間違ってる!確かにボク達もちっちゃいかもしれないけどさ、こういう場合はね…」
 フェイは誇らしそうに、囁いた。
「世界は大きいねって言うんだよ」


 ──皆に幸多き一年であることを…


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