「たーまき様ー!お電話です!!」
「あぁあぁあ?!この書類の山見てから言えっての!!切れ!!」

どうせシャインとかダイゴとかそこらだろ!
そういい捨て、目の前にある書類の山を整理していく。
この一週間で雪崩のように事件が起こりまくった。
その所為でいつもより書類が愕然とする量になってしまった。

もうこれはいやだとかやりたくないとか言ってる場合じゃない。
ここでまた溜めてでもみろ、今度こそシャインがストレスで倒れる。
普段はそんな事思わないが、あいつは元々病弱だ。
これ以上やらせたら流石に倒れるだろう。

つーかあいつ休まないんだよな、休め言っても。
というか人の仕事奪うんだよ、お前にやらせたら日が暮れるって。
まぁそれに甘えてるあたしもあたしなんだけどね。

「切るとかんな無茶な!」
「誰だよ相手!!」
「ラピス皇帝様です!!」
「……………。…………は?」

ラピス皇帝。……シャオさんがあたしに電話ぁ?!
うっそ、あの人見つけるのとか探すのとか超大変だってのに。
それ以前にあたしに何のようだ。

とにかく出るのが先決だろう。
机の上に置いてある電話を取り、保留ボタンを解除する。

『おー、俺の嫁!随分出るの遅かったな。』
「えぇ、ちょっと此方も立て込んでいまして。それでご用件は?」

どうやら本当にシャオさんからの電話だったらしい。
そりゃ相手がシャオさんなら電話切れないや。
無謀すぎる、つか絶対そんな事したら乗り込んでくる。

『ミレイちゃんって子について。……お前会ったことあるな?』
「はい?……何かあったんですか?」
『いや、恐らくお前にラピス地方とラピス皇帝について聞いてくるだろうと思ってな。』

一応他の皇帝共にも圧力はかけたが。釘を刺しに電話した。
そういうシャオさんの声は、どこか緊張をはらんでいた。
……ミレイちゃん、何しでかしたのだろう。あたしと同じ異世界から来た事がバレたとか?
それだったらあたしの方がバレるか、素性しれてないんだし。

『あの子よ、ラピス地方知らなかったんだ。お前と同じで。』

あぁ、そういうことか。

『俺はまぁ、基本的に名前名乗らねーし分かって無くてもまぁ当たり前だけどよ。』
『……知らねーなら、それでいい。知る必要ねぇ。』
『ラピスはこの腐った世界に抗ってんだ。この世界が好きだといった子を絶望させたくねぇ』
「……相変わらず、優しいですね。」
『まーな。お前だって皇帝の地位じゃなかったら絶対言わなかったぜ?』
「はい、それは分かってますよ。他の皇帝達より親密なんですから。」
『もっちろん。』

つわけでまた今度デートしね?
この書類全部処理してくださったなら考えます。

そういい、プツッと電源を切る。
まったくどこまであの人は優しいんだろう。……シャオさんの意見には賛成だけど。


ミレイちゃんよりあたしの方がこの世界に長くいる。
長くいるだけ、地位が上にあがるだけ、見てしまったこの世界の醜さ。

ラピスを知るとなると、その醜さを目の辺りにしてしまう。
それを恐らくシャオさんは避けたいんだろう。
なんたって、この腐った世界に喧嘩を吹っかけ、戦争を起こしたんだから。

多くの犠牲者が出たことを、その時の国家の醜さを、愚かさを。
確かに知らなければそれでいい。少なくともあたしだって教える気はサラサラない。
あたしと違って、あの子には選択肢がいくらでもあるんだ。
だから、知る必要はない。

そもそも国が何しようとしてるのかを把握してるのは、シャオさんとあたしぐらいなもんだ。
もし他の奴が知ってても、地位がなければただの戯言になる。
……だから、あたし達が漏らさなければ大丈夫ってことだ。


まぁそんな簡単に会うこともないだろうけど。
色々考えてグチャグチャになった頭をそこで終わりにし、目の前に広がる書類に視線を戻す。
とりあえずあたしが今しなくちゃならないのはこの書類の整理だ。



知っていいこと、知らなくていいこと
(世の中って、知らない方が幸せってもんの方が多いんだよ。)




*****あとがき*****

そんなこんなで、伶さんの小説にテンションが上がりその後の皇帝を書いてしまいました。
今度はミレイちゃんとおしゃべりしたいなぁ。そんな事を思いつつ。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました!!



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