やさしさってたぶん、君。
木陰で座り込んで落ち込んでたわたしに気付いて、声を掛けてくれた。
「おい、そんなところでどうした?」
でもごめんね、今は、何か話したら泣きそうなんだ。
精神不安定な事は知ってる、昔から言われ続けてきた。
本当は泣き虫だとも、嘘泣きが得意だとも。
別に、嘘泣きが得意なわけじゃ……いや、ちょっとだけあるけど。
ただ、本気で泣いてても、嘘泣きにしか見えないのだと言われたのは少しこたえた、かな。
ただ無性にあのロクでもない家が……思い出されて、それで懐かしくなって。
親は確かに過干渉で嫌だったけど、あそこには弟もいたし……。
何より、そこには自室というものがあった。
そこがわたしの「帰る場所」だった。
旅を続けていくのも楽しい、けど。
ねぇ、たまに、足元がいきなり消えてしまいそうな、そんな怖さがあるんだ。
……わたしはここにいても良いのかな?
柄にもないホームシックと消滅しそうな怖さで泣きそうになって何も答えずにいたら、頭上で舌打ちが聞こえた気がした。
だからわたしは、首をすくめた。
ああ、またわたしは誰かを怒らせた。
やっぱり、返事くらいはするべきだったんだ。
「そんな顔で黙り込むな。」
「シャイン、さん……すみま……えぇと、あの?」
ぽんぽんと背中を叩かれてあやされているのは……気のせい、やんね?
「だから……何を溜め込んでるのかは分からんが、無理してまで泣くのを我慢するな。」
「……。」
今は、ポケモンも出してない。
どうしても、心配されるのが分かってたら、出せなかった。
だから、今は、二人っきり。
「泣いてもいいのかな。」
敬語もなしに、言葉だけが零れ落ちた。
「ああ、泣きやむまで、傍にいてやるから。」
もう言葉の前に、涙ばかりが零れ落ちて。
涙の意味を君は聞かない。
君はやさしい。
やさしくて……やさしすぎて、残酷だ。
たとえばいま消えてしまっても 、君は泣いてくれるだろうか。
絶対に、在り得ない。
それが分かってるから、余計に悲しいんだ……。
* * *
シャイミレへのお題:やさしさってたぶん、君/「泣いてもいいのかな。」/たとえばいま消えてしまっても、きみは泣いてくれるだろうか http://shindanmaker.com/122300
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