幽霊騒ぎ、再び。

 吸い込まれそう、な、青い瞳を。一度、飽きるまでずっと、見詰めてみたい。
 ……それは、わたしの単なるワガママ。
 でも、そんな事を思いながら寝てしまったからだろう。また、やらかしてしまったっぽい。
 「夢のけむり」としての、わたしの悪癖の発動を。
 今回はいつものように実体まで構成するんじゃなくて、もう文字通りの幽体離脱のような。
 だってほら、道行く誰もが、私の存在に気付かず、わたしを突き抜けて、通り抜けて。
 だからわたしは、最初は焦りまくっていたけれど、今は少しワクワクしながら、彼を探しているのです。
 ……あの、青い瞳の男の子。彼の目を、一度奥深くまでじっくりと、私が飽きるまで覗き込んでみたい。
 そんなこんなで、ジョウト・カントーから海まで越えて、ホウエンをフラフラ浮いているわたし。「夢渡り」はいつもの事だから、多分気の向くままに漂っていれば、いつかは巡り逢える筈。
 黒い髪の彼を見付けて、わたしはそっと近寄った。多分、彼も今のわたしに気付く事はないだろうけれど、でも気分的な問題で。
 ポケモンバトルの特訓をしている彼は、ふと風でも吹いたかのように、辺りを窺った。じっとしていないのは彼らしいけれど、でも、今はちょっとじっとしていてほしいのに。
 何とか彼の前に回り込んで、ちょっとドキドキしながら肩に手を置かせてもらって、ようやくわたしは目的を果たすことができそうだった。……と、思ったのに、それは甘かったらしく。
 どうしてだろう、何だか目が合っている気がするような……? 不安に揺れる瞳が見たかったわけじゃない。なのに、どうしてそんなに頼りなさそうな表情をするの。
 そこまで考えてから、ふと気付く。透けて殆ど透明なこの身体。希薄に過ぎる気配。普通の人はわたしを認識できなかった。でも、気配に聡い、彼ならどうなんだろう? もし、知り合いが半透明で目の前に現れたら……。うん、死んだとか思うかもしれない。
 だから、わたしはにっこりと笑った。死んでないよ、と伝えるつもりだった。この体質のことをどこまで伝えようか、まだ悩んでいるのだけれど。
 まさかそこで目が覚めて、本体に戻っちゃうとか思わないじゃないか……!
 ああもう、正直に言おう。彼に盛大な勘違いをさせてしまっていると思われる。わたしが今際の際に、それこそ成仏間近に会いに行ったような。
 次回、どうやって彼を言いくるめようか、悩み中なのです、まる。ていうか、じっくり目を見る暇もなかったよ……。



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