お祭りと異世界人。
「……ん?」
池のほとりでパシャパシャと水を掛け合い、じゃれているような二匹のポケモンに何だか見覚えがあって、シャオはそちらに近付いた。
彼に気付いたランターンがササッと、よく育てられていそうなミロカロスの影に隠れる。
「あー、お前ら……ルージュに、コゲツ、だったか? それともアカツキ?」
どれもこれも、一度か二度しか聞いた事のない名前だったのでうろ覚えだが、ミロカロスが頷いて一声鳴いた。言いたい事は察してくれたらしい。
要するに、二匹とも、ミレイのポケモン達なのである。そして、普通なら、近くにそのトレーナーであるミレイ自身もいる筈だ。
「んじゃ、ミレイちゃんに声掛けてから行くかなー。お前ら案内してくれね?」
ところが予想に反してミロカロスは首を左右に振り、ランターンは心配そうに、近くにある大きな岩を振り返った。
「何かあるのか?」
行くなと言われればむしろ行きたくなるのが人間というものである。シャオはランターンが視線を投げ掛けた方へと足を踏み出した。
ミロカロスが、尻尾で、やんわりと遮ろうとする。おそらくシャオと彼のポケモン達の強さは感じ取っているだろうに。
「……邪魔すんの?」
獰猛な笑顔で見上げれば、ミロカロスは溜息を吐いた。その背後でランターンがカタカタと震えている。
一応、止めたという事実が欲しかったらしい。シャオと視線が合ったミロカロスは尻尾を持ち上げると、そのまま岩を指した。
「サンキュ」
ニッと、今度は人懐っこい笑みを浮かべてシャオが礼を言うと、ミロカロスはまた溜息を吐いた。
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