……本当に、あの出会いは印象的でした。
布団に潜り込み、わたくしを抱き締めて離さない彼等を見ながら、思います。
閉じられた瞼の下は、今は何色を秘めているのでしょうか……。
どの色でも美しいですし、その持ち主は誰もが魅力的。
わたくしは、そっと彼等の額に唇を寄せました。
彼等の身体中に走っていた継ぎ接ぎの痕は、頑張って癒した甲斐があってかなり薄れましたが。
こうして、あの時のようにわたくしを抱き締めないと不安定にあるあたり、まだ、傷痕は深いのです。
あの後、狂い、堕ちてしまったモノをお姉様が一掃し。
彼等を彼等たらしめた極悪非道の研究は、実験場の瓦礫の下に封印されました。
……何が極悪非道だったのかって、聞かれそうですわね。
神と命を冒涜していた、あの研究の内容。
あまりにも重くて、当事者でもないわたくしが口にしても良いものか、と思うと、とてもとても。
アレを語る資格があるのは、彼等だけでしょう。
今は傍にいない、幕引きを手伝ったお姉様にも、あるのかもしれませんが。
そう、お姉様は、もう傍にはいないのです。
彼等が満足に動けるようになってから、お姉様は行ってしまわれました。
もう大丈夫ね、と。
今頃は、どこの空の下、旅をなされているのでしょうか。
どこの空の下、誰かを救っているのでしょうか。
きっと、また誰か……いたいけな女の方を、誑かしているに違いないですわ。
本当に、罪作りなお方……。
ふふ、でも、そうでなければお姉様とは言えませんわ。
残されたわたくしたちは、別れを告げられた街の隅で、今も暮らしています。
お姉様を追って旅をすることも、恐らく無理をすれば可能だったでしょう。
けれど、そうすれば、わたくしはやがてお姉様に溺れ、縛り付けようとしてしまったかもしれません。
そんな不健全なことをしてお姉様を困らせるのは、本意ではないですわ。
……お姉様の心には、わたくし以外の誰かが住んでいらっしゃったのですもの。
もうすぐ、夜が明けますわね。
わたくしまで、あの時のことをこんなに鮮明に思い出すなんて……。
大丈夫かしら、何かの兆候でなければ良いのですけれど。
それとも、彼等がまた、魘されたのでしょうか。
嘆き疲れ、絶望に全てを諦めようとしていた彼等を引き留めたのはわたくし。
残酷なだけの世界と、思ってほしくなかった。
優しくて美しいモノを、知ってほしかった。
今から思えば、わたくしのワガママで。
それこそ、非常に惨いことをしたのかもしれないと、思うこともあります。
彼等が魘されることがあるのは、強いて言うなれば、嘆き疲れた者の絶望の怨嗟。
けれど、それでも、わたくしは彼等に……。