―― ダレ ?
先程よりも、どこか幼子めいた思いが届いた時。
ようやく、峠を越えたのだと感じました。
実は……と、いうほどのことでもありませんが、わたくしは。
かなり不器用な方だと、自覚しております。
思念を伝えたり、受け取ったりすることも、当時はお姉様しか相手がおらず。
お姉様専用に思念の回路を開くのが精一杯でした。
そのわたくしに思念を届かせたのですから、彼等は。
十分に力のある、『神の眷属』だったのです。
……もっとも、その時は、彼等なのか彼なのか、迷いましたけれど。
わたくしがギリギリで間に合った彼等は。
継ぎ接ぎだらけの身体、黒い髪、瞬きする度に色を変える瞳。
最初に見た灰色から、赤、金、緑、青、紫……と、それはまるで虹のように。
あの時でなければ、見惚れていたでしょう。
けれど、それ以上に、彼等は今にも消えそうでした。
見惚れる前に、彼等をこの世界に引き留めておかないといけない、と、思いました。
諦めないで。
絶望したまま消えないで。
今は、独りではないから。
ほら、わたくしも、ここにいる。
―― ハヤク ニゲテ
先程と同じ言葉を繰り返した、彼等。
逃げないわ、と返しました。
周りを心配しているのであれば、お姉様がいる限り安心ですし。
もし、そうでなかったとしても……。
―― キズ ツケ タク ナイ
大丈夫、わたくしは癒しの力を持っているから。
何かあっても、大丈夫。
―― コノ バケモノ ニハ カカワルナ
こんなに傷付いて、嘆いて、わたくしを気遣うのに。
躰はどうか分からないけれど、心は絶対にバケモノなんかじゃない……!
ぽた、と、雫の落ちる音。
そっと仰ぎ見れば、彼等は涙を零していました。
震える吐息がわたくしの耳をくすぐり、癒した腕が恐る恐るわたくしの背に回されました。