そらに芽吹くとき トキ編06

 ―― ダレ ?

 先程よりも、どこか幼子めいた思いが届いた時。
 ようやく、峠を越えたのだと感じました。

 実は……と、いうほどのことでもありませんが、わたくしは。
 かなり不器用な方だと、自覚しております。
 思念を伝えたり、受け取ったりすることも、当時はお姉様しか相手がおらず。
 お姉様専用に思念の回路を開くのが精一杯でした。

 そのわたくしに思念を届かせたのですから、彼等は。
 十分に力のある、『神の眷属』だったのです。
 ……もっとも、その時は、彼等なのか彼なのか、迷いましたけれど。

 わたくしがギリギリで間に合った彼等は。
 継ぎ接ぎだらけの身体、黒い髪、瞬きする度に色を変える瞳。
 最初に見た灰色から、赤、金、緑、青、紫……と、それはまるで虹のように。
 あの時でなければ、見惚れていたでしょう。
 けれど、それ以上に、彼等は今にも消えそうでした。
 見惚れる前に、彼等をこの世界に引き留めておかないといけない、と、思いました。

 諦めないで。
 絶望したまま消えないで。
 今は、独りではないから。
 ほら、わたくしも、ここにいる。

 ―― ハヤク ニゲテ

 先程と同じ言葉を繰り返した、彼等。
 逃げないわ、と返しました。
 周りを心配しているのであれば、お姉様がいる限り安心ですし。
 もし、そうでなかったとしても……。

 ―― キズ ツケ タク ナイ

 大丈夫、わたくしは癒しの力を持っているから。
 何かあっても、大丈夫。

 ―― コノ バケモノ ニハ カカワルナ

 こんなに傷付いて、嘆いて、わたくしを気遣うのに。
 躰はどうか分からないけれど、心は絶対にバケモノなんかじゃない……!

 ぽた、と、雫の落ちる音。
 そっと仰ぎ見れば、彼等は涙を零していました。
 震える吐息がわたくしの耳をくすぐり、癒した腕が恐る恐るわたくしの背に回されました。


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