そして何がどうなった。

 ――んで、どこだここは。

 考えている事がさっきと同じだなんて気のせいだ。
 気のせいって事にしてくれ。

 気を失う前は白い場所にいたが、今は鼻を摘まれても分かりそうにない暗闇だ。

 それにしても、さっきは酷い夢を見た。
 そうだアレはきっと夢に違いない。
 あんなおちゃらけた自称神に実験台宣告受けたなんて、普通は在り得ん。

 って事は、俺は今、どういう状態なんだ?
 真っ暗って事は、目が開けれない状態だったりしないよな?

 ……否定はできない。
 さっきの吹っ飛んだ悪夢の前は、地震や津波なんて悪夢のような現実に襲われてた。
 津波に流されて重症とか、瓦礫に埋もれてて光も入りませんとか。
 想像したくないが、そっちは現実に在り得るんだ。

 俺、もしかしてどこかで頭を強く打って、あんな夢を見たのかな。
 今いる此処は窮屈だが、身体は全く痛くない。
 痛みを感じられないほど、重症である可能性がある。
 だってほら、ここはこんなに空気が甘く、暖かい……。

 ……暖かい?
 普通、死ぬ時って、寒くなるもんだろ?

 本当に、ここはどこなんだ!?


 自分の呼吸が早くなっていくのが感じられた。
 そして煩いほどに荒れ狂う鼓動。

 そういえばさっきは、そんな事は感じなかった。
 少なくとも今俺は、生きている。
 そして、夢を見ているわけじゃない。


 ――グラッ!

「!?」

 何だ!?
 余震か!!?

 恐怖に目を瞑ろうとして、既に瞑っている事に気付いた。
 何だ、道理で真っ暗な訳だ。
 目を強く瞑ってるんじゃ、世話ねーな。

 うっすらと目を開けると、すぐ目の前に壁みたいな何かがあった。
 俺は非常に窮屈な体勢で、何かに閉じ込められている。
 何か、は光を完全に遮断するほどの物でもなく、外に光がある事が分かった。

 押し込められた身体を何とか動かそうとすると、また揺れた。
 ……というか、俺が閉じ込められているのはバランスの不安定な……卵形の……?

 このままバランスを完全に崩したら、俺は外に出られるだろうか?
 それで出られないほど壁が頑丈なら、それはそれで安心できるかもしれない。
 瓦礫が上から降ってきても、無事でいられるかもしれない的な意味で。

 取り敢えず、目の前の壁を頭で押す。
 腕は折り曲げられていて、とても伸ばせる感じじゃなかったからな。

 すると、コツコツと、壁の外からも音と振動が伝わってきた。
 まるで、俺がここから脱出するのを手伝ってくれようとするかのように。

 やがて目の前の壁は割れ……


 目の前の光景に、俺は絶叫した。

「キュウウウウウゥゥッ!!!?
(ユニコーンがでかぁっ!!!?)」

 ……は?
 きゅううぅ?
 何で!?

「キュ、キュウ……(あ、あー……)」

 何で声がキュウキュウ言ってんだよ俺!!?

 そんな俺の目の前に、ぬっと一角獣……さきほど俺が絶叫した原因が顔を出す。
 ちなみに、見上げたら首が痛くなるほど、でかい。

 そんな非現実を目の当たりにした俺は、情けない事に数秒フリーズした。

 ――ぽく、ぽく、ぽく、チーン☆

「キュウウウウゥゥ!!(うわああああぁぁ!!)」

 喰われる!
 そう思った俺は思いっきり回れ右。
 超絶ダッシュで逃げ出した。

 もう必死に逃げて、普通なら在り得ないほどデカイ樹を駆け上がって。
 そこで俺は、俺自身も十分おかしな事になってると再認識した。

 周り中が大きい。
 つまりは俺が、縮んでるって事だ……。

 思わず見下ろした手は、人間のそれではなく。
 栗鼠のようなそれに、俺は今度こそ思考を放棄したくなった。


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