神様アンタを恨みます。

[えーえー、マイクテス、マイクテス。
 本日晴天なり☆]

 木の枝の上で呆然としていたら、いきなり声が聞こえた。
 しかも、どこからともなく……いや、頭に響くような声だ。

 強いて言えば、質の悪いイヤホンを着けたような……?
 いや、それも少し違う気がする。

 だがそれよりもこの場合問題なのは、つい最近その声を聞いたという事だろう。
 そう、あの白い悪夢の時に聞こえてきたのと、同じ声だ。

 思わず周りを見回す。

 ――何か、色んな生物から注目されている!!?

[そりゃーそうだよ。
 キミ、久しぶりに創られた新種だもんね。]

 だから、どこから貴様は話し掛けてきている!?

[ボクはこの中にはいないよん。
 言ったでしょ?
 ボクは所謂神様だって。
 そうほいほいと下界に降りていけないんだよ。
 今はキミの頭の中に話し掛けているのさ♪]

 ……うわぁ。
 何てファンタジーな。

[うん、そうだねっ!
 その世界は、キミ達のいうファンタジィな魔法世界さ☆]

 皮肉に感心されたように返されて、俺は何だかどっと疲れを感じた。

 ファンタジーな魔法世界……だと?
 一体何の冗談……いや、夢なんだ?

[キミには悪いけど~、これは紛れもない現実だよ?
 言ったでしょ、実験台になって貰うって。]

 成程、あれも夢ではなかったと。
 そしてその結果がこのザマか。

 俺にとっては訳の分からない場所に、説明の一つもなく放り込む。
 しかも、俺の姿まで変えて?

[だってキミ、小動物っぽかったんだもん!
 姿は別に何でも良かったんだけど、ちっさい方が逃げ隠れしやすいでしょ。]

 そんな事より、と、自称神様は黄昏ている俺に言った。

[キミにやってもらいたい事言うね~。
 キミには、魔力を摂取してマナに還元してもらいます!
 えーとぉ、空気清浄器みたいな?]


 ヤツの説明によると、この世界の殆どの生命は世界に溢れるマナを取り込み、それと生体や精神のエネルギーを混ぜ合わせて魔力に変換。
 そして、お約束な事に、その魔力で魔法を使えるのだそうな。

 魔力はある程度は体内に蓄積されるが、余剰分は放出される。
 ところが、そうすると世界からマナが減っていき、逆に魔力が増えてきた。
 マナよりもエネルギー保有量が多く、扱いにくい魔力は生物には毒となり、暴走したものが魔物と呼ばれている。

 魔力の危険性の喩えとして、原始の地球における酸素を持ち出された時はびびった。
 そう、確かに原始生命体にとって酸素は有毒だった。
 動物は、植物の後に、その有害な酸素を利用すべく生まれた命なのだ。

 ――閑話休題。
 つまりそれが俺がさせられようとしてる事。
 世界のマナと魔力のバランスを取る事。

[まぁ、キミは存在さえしてれば良いんだけどね。
 暫くはその新しい身体(うつわ)に慣れるよう頑張ってよ。
 細かい注意事項は、また思い出したら言うからさ。]

 どうせ俺の意見など聞く気がないだろう事が分かったので、溜息を吐く。

 嗚呼、神様、俺が何をしましたか?
 俺、アンタを恨みますよ。


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