お祭りと異世界人。

「うわぁ、人いっぱいですね!」
 クチバに着いたミレイは、はしゃいだ声で言った。
 今の彼女は、少なくとも表面上は、全くいつも通りに見える。髪は二つに括られているし、服装も、確かにワンピースなのは珍しいが見た事のあるものだし、態度だっておかしくはない。
「……あにゃ? えーと、シャオさん、あそこに立ってるの……」
「ああ、警備のアクア団だろうな」
「へえ……えっ!!? マジでアクア団の方なんですか!? えっ、アクア団って、ホウエンの、あ……じゃなくて、団体さんだって思ってたんですけど……!」
「この祭りのメインイベントは、カントー皇帝とホウエン皇帝の6VS6バトルだからなー。ミレイちゃんも飛び入りで参加してみるか?」
 目を丸くしてシャオの言葉を聞いていたミレイは、はっと我に返るとプルプルと首を横に振った。
「無理です! あ、ホウエン皇帝って事は、珠ちゃんも来てるんですね」
「おう。後でちょっかい掛けに行ってみるか!」
「ちょっかい掛ける事そのもんは止めるつもりないですけど、せめて向こうの迷惑にならない時間帯を選んで下さいね、シャオさん……」
 もう一度アクア団に視線を投げ掛けると、ミレイはそこから無理矢理意識を引き剥がし、今度は周りの出店を観察しだす。
「いっつもこういうのを見る度に思うんですけど、このお店の人達って、いつもはどこで何をしてるんでしょうね?」
「出店見てそこで遊ぶ事を考える前にそんな疑問持つのは、お前くらいだと思うぞ」
「え、そうですか? ごく当たり前の疑問だと思うんですけど……。それにしても、何か飲むもの売ってないんですかね」
 台詞の後半は小さな声だった為、それは人の喧騒に掻き消されて、シャオの耳には届かなかった。



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